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【褥瘡ケア】褥瘡の基本と在宅を見据えたリハビリ方法を徹底解説

褥瘡ケアを
リハスタッフが
細かく解説

2025年4月28日

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【褥瘡ケア】褥瘡の基本と在宅を見据えたリハビリ方法を徹底解説

訪問診療に携わる方や、慢性期病院や地域包括ケア病棟で働く方の中には、日常的に褥瘡の治療を行ったり、ケアプランを立てられる方が多いのではないでしょうか。

褥瘡ができる原因の理解を深めたり、予防方法を正しく把握することによって、患者さんに、適切な褥瘡ケアを提供できます。

本記事では、褥瘡に関する基本知識や予防のポイント、在宅を見据えた「おうちにかえろう。病院」で行っている褥瘡ケアについてご紹介していきます。

ぜひ、ご覧ください。

本記事でお届けしていること

この記事の監修

「おうちにかえろう。病院」
言語聴覚士 岡本さん

褥瘡の基本知識

まずはじめに、褥瘡の基本知識についてご紹介します。

褥瘡の定義と分類

褥瘡とは、お尻や腰など、同じ場所に長いあいだ体重がかかり続けることで皮膚やその下の組織が損傷している状態のことです。

褥瘡が発生すると、皮膚が赤くなったり、ただれたり、ひどい場合は皮膚の奥まで傷んでしまうこともあります。

一般的には「床ずれ」とも呼ばれ、けがや病気で体を自由に動かせず、寝たきりの状態が続くことで、褥瘡が発生する要因になりえます。

褥瘡の重症度は、深達度(傷の深さのレベル)によって、ステージⅠからⅣまでに分類されています。

【褥瘡のステージ】

参考:厚生労働省 褥瘡に関するガイドライン 褥瘡治療・ケアの確認リストより

褥瘡の発生メカニズム

続いて、褥瘡の発生メカニズムについてご紹介いたします。

褥瘡は、長時間寝たきりの状態が続く方が、身体の一部分に圧がかかったり、栄養が不足していたり、摩擦やずれが生じるといった複合的な要因が重なることで発生します。

褥瘡が発生するメカニズムは、大きく分けて4つに分類されます。

リハスタッフとして、褥瘡の患者さんを診る際は、患者さんの自立度を確認し、骨突部分に圧がかからないように除圧できるポジショニングに注意しましょう。

褥瘡が引き起こすリスク

続いて、褥瘡が引き起こすリスクについてご紹介します。

褥瘡は一度できてしまうと、皮膚バリアが破損しているため、細菌感染症にかかりやすくなったり、ADL低下、精神的ストレスなど、患者さんの生活全体に大きな影響を及ぼします。

具体的には、褥瘡による痛みや出血が原因で身体を動かすことが辛くなってしまったり、治癒するまでに時間を要することで精神的な負荷がかかる場合があります。

リハスタッフとして、褥瘡のある患者さんと関わる場合は、皮膚状態の変化に注意し、動作中の除圧も意識しましょう。

他職種とともに患者さんの様子を観察し、褥瘡予防・治癒につながるよう働きかけることが大切です。

褥瘡を予防するポイント

続いて、褥瘡を予防するポイントについてご紹介していきます。

体位変換とポジショニング

まず最初は体位変換とポジショニングです。

褥瘡を予防したり、悪化を防止させるためには、褥瘡の原因となる圧力を取り除くことがとても重要です。

患部の状態を丁寧に観察しながら、おおむね2時間ごとの体位変換によって圧力を分散させることで、褥瘡の予防や悪化の防止につながります。

また、ポジショニングでは、クッションや枕などの補助具を用いて、患部に圧がかからないよう適切な姿勢を保てるようにサポートしましょう。

体位変換とポジショニングでは、患部の除圧をすることが重要ですが、患者さんが快適に過ごせる体勢に整えてあげることが大切です。

栄養管理とスキンケア

褥瘡ケアをするうえで、栄養管理とスキンケアは欠かせません。

褥瘡の患部は、衛生的な環境が保たれていない場合、傷の治癒が遅れたり、状態が悪化するおそれがあります。そのため、傷周辺に付着した細菌や排泄物などの汚れは、適切に洗浄し、清潔を保ちながら丁寧にケアすることが大切です。

そして、褥瘡の周りをしっかりと保湿して乾燥を防ぐことも重要です。

乾燥状態が続くと、肌のバリア機能に影響を及ぼす可能性があるので、湿潤環境のコントロールが必須です。

また、傷に対するアプローチの他に、身体が傷を治す力を育むために栄養管理を行うことも褥瘡ケアに対して有効です。

低栄養状態では皮膚の再生力や免疫力が低下してしまうため、亜鉛やビタミンCなどの栄養素を取り入れることを意識しましょう。

褥瘡ケアにおけるリハビリ職の役割

続いて、褥瘡ケアにおけるリハビリ職の役割についてご紹介します。

ポジショニング・シーティングによる負荷軽減

最初は、ポジショニング・シーティングによる負荷軽減です。

ポジショニングとは、患者さんの姿勢の固定化を防ぎながら、身体にかかる圧力などの負荷を最小限にする姿勢調整です。

筋緊張・感覚障害・関節可動域を評価し、安楽姿勢を設計するとともに、寝たままの状態が続く患者さんの背抜きをする機会をつくりましょう。

また、車いすに乗っている時間の長い患者さんには、クッションの選定をして、骨盤位置の調整を行うことが大切です。

仙骨部に圧が集中していると、褥瘡の発生リスクが高まるため、座面角度の調整・クッションの前後入れ替えが必要になるケースがあります。

在宅復帰に向けたリハビリ

地域包括ケア病棟などでは、「褥瘡を治すケア」から「生活で褥瘡を再発させないケア」への視点の転換が求められます。

患者さんご自身や同居される方の支援によって、体位を変えることで、褥瘡の発生リスクは下がります。

在宅復帰をされた後に、褥瘡の再発リスクを最小限に抑えるために、退院後も継続できる褥瘡予防を行いましょう。

ご家族や訪問看護との連携(在宅でのケア指導)

続いて、ご家族や訪問看護との連携による在宅でのケア支援についてご紹介します。

褥瘡ケアは、病棟での治療やリハビリのみで完結するものではなく、在宅復帰後も継続的な経過観察とケアが必要です。

そのため、ご家族や訪問看護ステーションとの連携が重要となります。
ご家族には、除圧を目的としたマットレスやクッションの使用方法、体位変換の頻度や姿勢の工夫(ポイント)について分かりやすく伝えましょう。

この際、同居されているご家族が無理なく取り組める範囲でケアを継続できるよう、実践しやすい方法でサポートすることが大切です。

また、訪問看護ステーションが在宅ケアに関わる場合には、褥瘡の状態やスキンケア・栄養面での留意点を共有し、退院前カンファレンスや情報提供書などを活用して円滑な連携を図りましょう。

「おうちにかえろう。病院」の褥瘡ケアに対する取り組み

最後に「おうちにかえろう。病院」の褥瘡ケアに対する取り組みをご紹介します。

「おうちにかえろう。病院」の褥瘡ラウンドについて

「おうちにかえろう。病院」では、医師・看護師・リハビリスタッフ・栄養士など、多職種が連携して月に1回、褥瘡ラウンドを実施しています。

褥瘡ラウンドの目的は、褥瘡の状態を確認しながら、治療計画やポジショニングの見直しを行い、発生要因を多角的に把握しながら、今後のケアの方向性を検討することです。

特に「おうちにかえろう。病院」のような地域包括ケア病棟では、患者さんの在宅復帰を見据えた褥瘡ケアが重要です。

「おうちにかえろう。病院」では、患者さんの生活環境から褥瘡が発生した因果関係を整理し、多職種の視点を取り入れながら、適切なケアプランの立案に取り組んでいます。

メンバーが集まり、情報共有を行っている様子

「おうちにかえろう。病院」で行う褥瘡ラウンドの様子

まずは、褥瘡ラウンドで周る患者さんの状態について情報共有を行い、スタッフ全員で、どのようなポイントを意識しながら褥瘡の状態を見るか、ディスカッションをします。

その後、対象の患者さんの病室に向かい、褥瘡の状態を確認。患者さんとコミュニケーションを取りながら、褥瘡の痛みの程度や発生時期、発生要因を丁寧に分析。

約1時間にわたる褥瘡ラウンドが終了すると、看護師やリハビリスタッフを中心に、今後の褥瘡ケアに関するディスカッションが行われます。

その時間では、褥瘡ケアに関する最新情報共有などが活発に行われ、チーム全体でケアの質を高めていく取り組みが進められています。

そのほかの褥瘡ケアに関する取り組み

地域包括ケア病棟や訪問診療所では、患者さんの褥瘡ケアは非常に重要な取り組みのひとつです。

「おうちにかえろう。病院」を運営するTEAM BLUEでは、やまと診療所の医師を対象に、在宅医養成プログラムの一環として隔週で在宅医療講座を開いています。

この講座では、心不全・感染症・褥瘡などの症状について、在宅現場での実践的な対応方法や医師としての判断ポイントをお伝えしながら、在宅医のスキル養成を行っています。


TEAM BLUEでは法人全体での褥瘡ケアに関するスキルアップ支援を行い、医師やコメディカルスタッフの知識と技術の向上をサポートしています。

まとめ

本記事では、褥瘡の定義や分類、発生メカニズム、そして褥瘡ケアにおけるリハビリスタッフの役割についてご紹介してきました。

さらには、全120床の地域包括ケア病棟としての機能を持つ「おうちにかえろう。病院」で行われている褥瘡ラウンドについてお届けしました。

この記事をご覧になった皆様にとって、ご紹介した褥瘡に関する知識やケア方法が少しでもお役に立てれば幸いです。

TEAM BLUEでは「おうちにかえろう。病院」で働く看護師や理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の方を募集しています。

オンラインによるカジュアル面談も行っておりますので、お気軽にお申込みください!